豊富温泉石油の温泉として知られる豊富とよとみ温泉は、日本最北の市である北海道稚内市から南に約40kmの位置にあります。

「奇跡の湯」とも呼ばれ、世界的に見ても非常に珍しい石油由来のタールを含んだ泉質で知られる豊富温泉は、アトピーや乾癬など、難治性の皮膚疾患に悩む方が全国から湯治に訪れることで有名な温泉として知られるようになりました。

ヘルスツーリズム大賞の受賞や、環境省指定の国民保養温泉地にも選ばれていますが、豊富温泉で湯治療養を支える施設が、北海道で初めて厚生労働省の定める『温泉利用型健康増進施設』に認定されています。

本記事では豊富温泉の泉質や効能、豊富温泉での湯治の期間や主な宿泊施設など、豊富温泉について詳しくご紹介します。

温泉に石油が含まれている「天然のオイルバス」、豊富温泉の魅力にせまってみましょう!

石油の温泉 豊富温泉誕生の歴史

その昔、明治33年頃にクマを捕るためにやって来たアイヌの人たちが道に迷ってしまい、一息つけようとタバコに火をつけようとした瞬間に、音を立てて炎が上がったそうです。

それを聞いた地質に詳しい人たちが山に入っていろいろと調べてみると、そこには石油が湧き出ていることがわかり本格的な調査が始まりました。

そして大正14年に石油の試掘を行ったところ、高圧の天然ガスと共にお湯が噴出して豊富温泉は開湯しました。

昭和初期の頃、草葺小屋を建てて地元の人達が温泉として利用するようになり、当時の研究機関の調査では筋肉や関節の疾患、慢性皮膚疾患、火傷などに効能があると認められています。

その頃は温泉近くに炭鉱があり、作業中に火傷を負った人がよく温泉を利用していたようで、当時の地元の方たちの間では、『火傷は病院にかかるより綺麗に治る』と評判になるなど、昔から皮膚疾患には高い効能があったようです。

非常に珍しい石油の温泉、豊富温泉の歴史は、‟マタギの一服”から始まったと言ってもいいかもしれませんね。

豊富温泉の泉質と効能

豊富温泉の泉質と効能豊富温泉の泉質は、ナトリウム塩化物泉ナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉の2種類。

豊富温泉は温泉水と一緒に天然ガスと油が湧出していて、石油臭と強い塩分を含んでいるのが特徴です。

他に類を見ない非常に珍しい原油(石油由来のタール)を含んだ泉質で、温泉に含まれる様々な成分が体の細胞を活性化させて、自然治癒力を蘇らせるといわれています。

タールにはアトピーや乾癬のつらい炎症、かゆみを鎮める強力な抗炎症作用があるといわれ、皮膚のバリア機能に必要なたんぱく質の一種「フィラグリン」の増加を促す作用があります。

また、皮膚の殺菌効果があるホウ酸が多いことや、皮膚炎を鎮静化させる作用があるマグネシウムイオン濃度が高いことも豊富温泉の特徴です。

豊富温泉はそれらの成分濃度が高く、絶妙な配合割合で溶解しているといわれており、アトピー湯治に最も適したナトリウム塩化物泉系モール泉だといわれるようになりました。

アトピー肌に優しいモール泉

肌に優しいモール泉豊富温泉は皮膚病に一番効果があるといわれる植物性泉の「モール泉」に分類されます。

日本の一般的な温泉というのは火山の地下マグマを熱源とする「火山性温泉」に分類されます。

モール泉というのは地下にある樹木の堆積物が泥炭を通して湧出しており、鉱物成分が多い通常の火山性温泉とは大きく異なり、植物性の腐食質が主成分となっています。

そのため植物性泉のモール泉は、まろやかな温泉で皮膚に優しいという特徴があります。

アトピー湯治で有名な温泉の中には、皮膚への刺激が強すぎて数分も入っていられなかったということもあるようです。

しかし豊富温泉は、殺菌作用が強いにもかかわらず刺激が少なく肌に優しい泉質のため、アトピー肌でも長く入浴していられるので温泉の効能も十分に得られると考えられています。

これもモール泉ならではの恩恵なのかもしれませんが、アトピー湯治で有名な他の温泉とは違う、豊富温泉ならではの特徴といえます。

ちなみにこの「モール泉」というのは、温泉法で規定された正式な泉質名ではないそうで、温泉法に基づく療養泉の分類についての泉質とは全く別の概念で、温泉の分類上では「塩化物泉」などとなるそうです。

豊富温泉の泉質に基づく適応症と禁忌症

豊富温泉の療養泉分類の泉質に基づく適応症と禁忌症は以下の通りです。

適応症
慢性皮膚病、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、きりきず、火傷、病弱児童、慢性婦人病
禁忌症
急性疾患(熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(特に初期と末期)

豊富温泉での湯治の期間

豊富温泉での湯治の期間湯治とは、温泉地に長期間(少なくとも一週間以上)滞留して特定の疾病の温泉療養を行う行為と定義されています。

豊富温泉でアトピー湯治をする場合、症状の度合いなどにより個人差はありますが、少なくとも1週間以上、目安は3週間程度が良いようです。

平均的な一日の湯治の回数は朝・昼・夕の3回入浴している方が多いようです。浴場にいる時間は、1時間~2時間が多く、浴槽への入浴そのものは10分~20分を繰り返すようです。

湯治に慣れないうちは、湯疲れや湯あたりで体調を崩す方もいるようなので、最初のうちは無理をしないで徐々に慣れていくようにするのがいいと思います。

豊富温泉の主な宿泊施設

豊富温泉の主な宿泊施設豊富温泉の主な宿泊施設をご紹介します。※営業時間などは、その時によって変更されることがありますので、必ず公式ホームページなどで確認して下さい。

川島旅館

昭和2年に開業した、歴史ある豊富温泉の老舗旅館です。

基本的に豊富温泉の泉質は、川島旅館のお湯は源泉かけ流し100%で、温泉成分が凝縮されているようだと評判が高い旅館です。

2016年7月にリニューアルオープンした大浴場には、石造りで趣たっぷりの露天風呂が設けられ、日によって油の濃さが変わるのも楽しみのひとつです。

旅館で出していた豊富牛乳でつくったプリンを商品化した「湯あがり温泉プリン」は、豊富温泉のお土産としても有名です。

【川島旅館の基本情報】
公式ホームページ http://kawashimaryokan.co.jp/
電話番号 0162-82-1248
営業時間(日帰り入浴) 10:30-22:00
料金・入浴設備
  • 大人:800円 子供:400円 小学生未満:無料
  • 源泉掛け流し
  • ※貸し切り露天風呂は、時間によって入浴することができます
  • ※入浴開始時間は日によって前後する場合がございます
その他設備 Wi-Fi(インターネット)全室完備
泉温 35.0℃

ニュー温泉閣ホテル

旅行や湯治、ビジネスなどの滞在スタイルに合わせて選ぶことが出来る宿泊プランが用意されていて、
とよとみ牛乳を使った話題のスイーツや、豊富なお食事メニューを楽しむことが出来ます。

平成24年にリニューアルされた大浴場は、入浴に適した濃度になるよう毎日調整されています。

いぐさの香りが漂う和室・和洋室は全27室で、くつろぎの時間を過ごすことができます。

【ニュー温泉閣ホテルの基本情報】
公式ホームページ http://new-onsenkaku.com/
電話番号 0162-82-1243
営業時間(日帰り入浴) 11:00-22:00
料金・入浴設備
  • 大人:500円 子供:300円 小学生未満:無料
  • 源泉掛け流し
その他設備
  • Wi-Fi(インターネット)はロビー、一部客室のみ完備(※有線接続の客室有り)
  • 喫煙所
泉温 31.8℃

ホテル豊富

ホテル豊富は、広大な自然に囲まれた静かな環境で、ゆっくりとのんびり過ごすことができます。

大浴場に注ぐお湯は、専用の源泉から油分をろ過して引いているため、良質な湯をご堪能できます。

客室はスタンダードな和室と洋室ツイン、和洋室ツインの3タイプがあり、どの客室もゆったりとした広さを確保しているので、ロングステイでも快適に過ごすことができます。

【ホテル豊富の基本情報】
公式ホームページ http://www.hotel-toyotomi.co.jp/
電話番号 0162-82-1055
営業時間(日帰り入浴) 11:00-21:30
料金・入浴設備
  • 大人:500円 子供:250円 小学生未満:無料
  • 源泉掛け流し
  • サウナ
その他設備
  • Wi-Fi(インターネット)はロビー、一部客室のみ完備
  • 源喫煙所
厳選温度/PH
  • 28℃
  • 8.08

ウカスイモシリ

豊富温泉で湯治をする方のための宿泊施設として2019年春に新しくオープンしたシェアハウス型の宿泊施設です。

豊富温泉から徒歩3分の場所にあり、さまざまなイベントが行われる多目的スペースや、スマートロック(電子錠)を導入した充実の設備に、全22部屋の客室を備えた豊富温泉の新しい宿泊施設として注目されています。

長期で湯治される方にも利用しやすい料金設定となっていて、連泊特別割引もあるようです

シーツの交換や洗濯はお客様のタイミングで選択できたり、寝具やマットは天然素材のものが使用されるなど、豊富温泉での温泉治療(湯治)を目的として訪れるお客様のために、さまざま配慮がされています。

無料のFree Wi-Fiや、シェアカーの利用も可能です。

【ウカスイモシリの基本情報】
公式ホームページ https://ukasuymosir.com/

湯快宿ゆかいじゅく(豊富町温泉保養宿泊所)

湯快宿ゆかいじゅくは温泉湯治者のための町営湯治保養宿泊施設です。

施設の使用は予約制となっていて、乾癬やアトピーなどの湯治療養の目的で、2泊以上宿泊する方が利用できる温泉保養施設です。

全国各地からやってきた湯治目的の方たちが、自炊しながら湯治に励んでいます。

詳細についてはこちらをご確認ください。

豊富温泉ふれあいセンター

豊富温泉ふれあいセンター豊富温泉には『ふれあいセンター』という町営の日帰り入浴施設があり、源泉をそのまま引いた湯治客用の浴場と、ろ過加水を行った一般客用の浴場があり、湯治客に幅広く利用されています。

一般客用の浴場といっても、豊富温泉特有の石油臭と白濁の湯には油が混じっており、モール泉特有の浴感と油分で体がツルツルするのがすぐにわかります。

ふれあいセンターの管内ではヨガ教室などの様々なイベントが開催されており、レストランでは有名な豊富牛乳でできたソフトクリームや鹿肉ジンギスカンなどの特産品も味わうことが出来ます。

また、ふれあいセンターには湯治客に様々な情報を提供する総合案内係のコンシェルジュがあり、健康相談員(保健師)も常駐していますので、気になる事などがあれば、まずはご相談してみましょう。

【豊富温泉ふれあいセンター】
電話番号 0162-82-1777
営業時間 8:30〜21:00(受付/20:30まで)
元日・整備日(毎年4月10日前後の4日間)は休み ※年末年始は短縮営業
日帰り入浴 大人(中学生以上):510円 子ども(小学生):250円 65歳以上:380円
有料個室 4.5畳 1,850円 6畳 2,360円(3時間まで)※1時間延長につき300円の追加料金が必要です。
その他設備 Wi-Fi(インターネット)・オムツ替え授乳スペース・喫煙所

温泉利用型健康増進施設の認定と医療費控除

平成29年7月4日、豊富温泉ふれあいセンター及びそれと連携して湯治療養を支える施設が、北海道で初めて厚生労働省の定める『温泉利用型健康増進施設』に認定されました。

温泉利用型健康増進施設とは、厚生労働省が定める「健康増進施設認定規程(以下「規程」という)」に基づき、「健康増進のための温泉利用及び有酸素運動を安全かつ適切に行う事のできる施設」と認定されたものを指します。

この認定施設を利用して温泉療養を行い、かつ手続き等の要件を満たした場合には、施設の利用料金、施設までの往復交通費について、所得税の医療費控除を受けることができます。

環境省指定の国民保養温泉地

国民保養温泉地に指定されるには、「利用源泉が療養泉であること」や「自然環境が保有地として適していること」など、温泉法に基づいた様々な条件を満たしている必要があります。

療養泉とは、温泉の中でも特に治療目的に適した温泉の総称で10種類に分類されており、環境省の「鉱泉分析法指針」において定義されています。

豊富温泉は国民保養温泉地に指定されており、2019年現在、日本国内の約3,000以上の温泉地の中で、環境省から国民保養温泉地に指定されている温泉地は97カ所です。

温泉利用の効果が十分期待できる健全な温泉地として、国民保養温泉地制度は昭和29年に始まりました。

ヘルスツーリズム大賞を受賞

ヘルスツーリズム認証制度豊富温泉は2018年3月9日に「特定非営利活動法人 日本ヘルスツーリズム振興機構」が主催する、第10回ヘルスツーリズム大賞を受賞し、北海道のヘルスツーリズム推進地に認定されています。

世界的に見ても非常に珍しい石油成分を含んだ泉質で、タール成分が皮膚病に効能が高いことや、湯治客のために行っている様々な施策が評価されました。

ヘルスツーリズムとは健康の増進や回復に主眼を置いた旅行や観光のことで、2016年からは政府主導の認証制度もスタートしました。

現代のヘルスツーリズムは「科学的な根拠に基づいた健康増進・維持・回復・疾病予防につながる健康的な旅のプログラム」と定義されています。

ヘルスツーリズムとは、旅行という非日常的な楽しみの中で、旅行中のトラブルを回避したり、健康回復や健康増進を図るものをさします。

そして旅をきっかけとして、旅行後も健康的な行動を持続することにより、豊かな日常生活を過ごせるようになることをいいます。

日本ヘルスツーリズム振興機構では、ヘルスツーリズムを「健康・未病・病気の方、また老人・成人から子供まですべての人々に対し、科学的根拠に基づく健康増進(EBH:Evidence Based Health)を理念に、旅をきっかけに健康増進・維持・回復・疾病予防に寄与する」ものと定義しています。

引用元:特定非営利活動法人 日本ヘルスツーリズム振興機構

豊富温泉の恵み 肌うれし

豊富温泉の恵み肌うれし有名な温泉地には、お土産として湯の花などを商品化してご家庭で温泉気分が味わえる「温泉の素」などが人気です。

神秘の名湯豊富温泉にも、豊富温泉の源泉を主原料にして作られたスキンケア商品「豊富温泉の恵み 肌うれし」があります。

日本最北の地という地理的な事情もあり、豊富温泉での湯治に行きたくても、なかなか行くことができない。そんなお声に少しでもお役に立ちたいという思いから、生まれたのが「豊富温泉の恵み 肌うれし」です。

豊富温泉をそのまま7倍に濃縮した豊富温泉濃縮水の「サロベツ大地恵泉」をはじめ、豊富温泉の石油臭がそのまま香る保湿クリーム「肌うれし湯治クリーム」など、「豊富温泉の恵み 肌うれしは」肌に優しい成分と豊富温泉の温泉水を配合して作られたスキンケア製品です。

インターネット販売の他、一部の商品は北海道の新千歳空港でも購入できます。

豊富温泉の天然油分を主成分にして作られたスキンケア商品『豊富温泉の恵み肌うれし』

皮膚科医も推奨する神秘の名湯

豊富温泉 石油を含んだ天然温泉
いかがでしたか?

豊富温泉の魅力が少しでも伝わったでしょうか。

豊富温泉の優れた効能は皮膚疾患に悩む方々から「奇跡の湯」とも呼ばれ、全国にある約3,200の温泉から特に薬効が高くて療養・保養に優れた温泉を、医師(温泉療養医)が推薦した温泉地100選に認定されています。

アトピーをはじめとする皮膚病への効果が期待できるといわれる温泉は数多くありますが、豊富温泉は実際に湯治を体験した人が全国から移住してくることでも有名です。

‟アトピーの聖地”と呼ばれる由来は、この辺りからきているのかもしれませんが、これも豊富温泉ならではのエピソードといえそうです。

地理的な問題もあり、なかなか豊富温泉に行くことが出来ないという人も多いと思いますが、じっくり計画を立てて豊富温泉特有の石油を含んだ非常に珍しい泉質で湯治を体験してみてはいかがでしょうか。