アトピー治療で処方されるステロイド外用薬と保湿剤(軟膏)アトピー性皮膚炎のが外用薬治療では、ステロイド外用薬や軟膏などの保湿剤を処方されるのが一般的です。

アトピーの症状や皮膚の状態によって、処方される外用薬も変わると思いますが、保湿剤には軟膏やクリーム状のものなど、多くの種類があります。

そこで今回は、アトピー性皮膚炎の外用薬治療で処方されるステロイド外用薬や、軟膏などの保湿剤にはどのような種類のものがあるのか、また、ステロイド外用薬との使い分けについても見ていきましょう。

ステロイド外用薬と保湿剤(軟膏)の役割の違い

アトピー性皮膚炎の外用薬治療では、症状によってステロイド外用薬や軟膏などの保湿剤を使い分けたり、両方を併用して使う場合がありますが、そもそもアトピー性皮膚炎の外用薬治療において、ステロイド外用薬と保湿剤は、どのような用途で使い分けるのでしょうか。

アトピー性皮膚炎の治療では、乾燥からくる痒みを抑えながら皮膚の保湿を保つのが大事です。

皮膚の乾燥している部分を保湿しながら皮膚のバリア機能を修復して、痒みを軽減したり皮膚を保護するのが軟膏などの保湿剤の主な役割といえるでしょう。

しかしアトピー性皮膚炎が悪化して皮膚が炎症を起こしているようなときは、保湿剤だけでは炎症を抑えることができなくなります。そこで炎症を抑えるために処方されるのがステロイド外用薬です。

このようにステロイド外用薬と保湿剤の役割は異なります。

ステロイド外用薬と保湿剤、それぞれの役割の違いを大別すると以下のような感じになります。

  • 肌の赤身や炎症を起こしている患部の改善に処方されるのがステロイド外用薬
  • 乾燥によるバリア機能の低下を防ぐのが保湿剤

ステロイドは副作用の懸念があるので、ステロイド外用薬にあまり良いイメージがない人も多いと思いますが、アトピー性皮膚炎の治療で処方される外用薬の役割が分かってくると、一概にステロイド外用薬だから良くないとは言えないのかもしれません。

医師の判断のもと、症状に合った適切なアトピー性皮膚炎の治療をすることが大切なのではないでしょうか。

アトピー治療には欠かせない保湿剤(軟膏)の種類

それではアトピー性皮膚炎の治療には欠かせない保湿剤(軟膏)の種類や用途の違いなどについて見ていきましょう。

ステロイド外用薬もそうですが、保湿剤も症状によって使い分けるのが基本です。

アトピー性皮膚炎の治療に用いられる保湿剤(軟膏)は大きく分けて、油脂性系ヘパリン類似物質系尿素含有系に分類できます。

それぞれの特徴や代表的な軟膏について見ていきましょう。

油脂性系の保湿剤(軟膏)

ワセリンに代表される油脂性の軟膏は、皮膚の表面に油の膜を作って水分の蒸発を防ぐことで保湿効果を得ます。

皮膚の表面を保護して、皮膚内部には浸透しないので肌への刺激はほとんどありません。

また、油脂性の軟膏は被覆性が高いという特徴があり、皮膚の保護作用や皮膚柔軟作用に優れていますが、ベタベタする使用感が欠点です。

ワセリンについてはこちらの記事『アトピー性皮膚炎 ワセリンの効果』でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。

油脂性系の主な特徴
  • 皮膚に吸収されないので肌への刺激がほとんどない
  • 被覆性が高く肌を保護する働きに優れている
  • 基本的に使用感はベタベタする

アズノール軟膏

アズノール軟膏油脂性の軟膏に分類されるアズノール軟膏は、抗炎症作用や抗アレルギー作用などを持つ、非ステロイド系の塗り薬です。

油脂性の軟膏はベタつく使用感を嫌がる人も多いと思いますが、アズノール軟膏は比較的ベタつきが少ない方だと言われています。

特徴的な淡い青色で、通常は湿疹や火傷などの治療に用いられることが多いですが、抗炎症作用や抗アレルギー作用があることからアトピーにも処方されるようです。

皮膚のかゆみを抑えたり炎症をやわらげる効果があり、非ステロイド系なのでステロイドに抵抗がある方でも安心して使用できそうです。

ヘパリン類似物質系の保湿剤(軟膏)

ヘパリン類似物質とは、もともと人の体内で生成される『へパリン』という物質に似せた成分で、肌に水分を蓄える働きをするという特徴があります。

水分を吸湿して角質層のバリア機能を改善する効果があるといわれ、保湿効果が高く、油脂性系の軟膏に比べて伸びも良いです。

抗炎症作用や血行促進の効果もあるので、血行が良くなって稀に痒みを感じることもあるようです。

無味無臭なワセリンなどに比べて、多少臭いがあるので気になる人もいるかもしれません。

ヘパリン類似物質系の主な特徴
  • 角質に水分を与え持続的な保湿効果がある
  • 油脂系の軟膏に比べて伸びが良い
  • 多少臭いがある

ヒルドイド軟膏

ヒルドイド軟膏ヒルドイド軟膏はベタつきが少なく、ヘパリン類似物質を含む処方薬です。

ヘパリン類似物質系の軟膏としては、最も知名度が高いと思われるヒルドイド軟膏は、軽度のアトピーの保湿対策に処方されることが多いようで、皮脂欠乏症などの治療にも使用されています。

ヘパリン類似物質は肌なじみが良く、低刺激で優れた保湿効果と抗炎症作用や血行促進などの効果があり、主に乾燥肌治療成分として使用されてきた成分です。

このヘパリン類似物質を主成分としているヒルドイドの効果が、加齢や乾燥からくる肌対策に効果的だという噂が広がり、医療保険を使って美容目的で入手する女性が問題となって、ヒルドイドへの保険適用を見直すべきとの論議が上がりました。

尿素含有系の保湿剤(軟膏)

尿素は天然保湿因子の一種で水に結合しやすいという特徴があります。

保湿効果が高く、古い角質を除去するピーリング効果や、角質の水分保持量を増加させて皮膚をやわらかくする効果があると考えられており、アトピーの他にも魚鱗癬や老人性乾皮症、毛孔性苔癬などの治療に用いられています。

しかし乾燥肌が悪化してバリア機能が低下している場合などは、尿素含有系の保湿剤を塗ると、ヒリヒリと刺激を感じることがあります。

尿素含有系の主な特徴
  • 古い角質を取り除くピーリング効果がある
  • 天然保湿因子の一種で水に結合しやすく角質の水分保持量を増加させる
  • バリア機能が低下した皮膚では刺激を感じることがある

尿素軟膏

尿素軟膏尿素軟膏は保湿剤の中でも、アトピー性皮膚炎に対する臨床効果や安全性、有用性の検討が詳しくされているようです。

いくつか行われた臨床結果では、皮膚の乾燥を伴う軽度のアトピー性皮膚炎には高い有用性が示されており、皮膚の炎症やバリア機能が改善されたという報告がされています。

尿素が配合された軟膏は世界中で使用されており、多くの商品が市販されていますが、ウレパールやケラチナミン、パスタロンなどの医薬品が有名です。

免疫抑制外用薬

近年では、アトピー性皮膚炎でみられる皮膚の炎症を改善するために、ステロイド外用薬のように抗炎症作用がある免疫抑制外用薬も処方されています。

炎症を抑える強さは、ステロイド外用薬のミディアムクラスからストロングクラスと同程度といわれ、皮膚萎縮や毛細血管拡張の副作用はほとんどないようです。

タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)

タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)アトピー治療の外用薬として処方されるタクロリムス軟膏(商品名はプロトピック軟膏)は、過剰な免疫反応を抑える免疫抑制外用薬の一つです。

T細胞におけるサイトカイン遺伝子の発現を抑制する働きがあり、タクロリムス軟膏は成人用0.1%(16歳以上)と小児用0.03%(2~16歳未満)の2つの種類があります(2歳未満は使用できません)。

ステロイド外用薬のミディアムクラスからストロングクラスと同程度の抗炎症作用がありますが、タクロリムス軟膏はステロイドよりも分子量が大きい為、アトピーのようにバリア機能が損なわれている皮膚からのみ吸収されて、正常な皮膚からはほとんど吸収されません。

そのため皮膚の状態が回復するにつれてタクロリムス軟膏は吸収されなくなるので、ステロイド外用薬を長期間使用する際に懸念される、皮膚萎縮や毛細血管拡張などの副作用がほとんどないといわれています。

タクロリムス軟膏は、ステロイド外用薬では副作用が出やすい顔や首などの皮膚の薄い部分や、長期使用に適しています。

アトピー性皮膚炎は症状に合った適切な治療が大事

アトピー治療で処方される外用薬には、ステロイド外用薬や軟膏など、色々な種類の保湿剤があることが分かります。

アトピー性皮膚炎にとって保湿とスキンケアが大事なのは分かっていても、自分の症状に合う保湿剤となると、なかなか自分では判断できないと思われます。

アトピー性皮膚炎を悪化させないためにも、症状が慢性化しているようなときは専門医に診てもらい、適切な外用薬を処方してもらうようにしましょう。