さまざまな温浴効果があり日本人が大好きな温泉。

大きな浴場でゆったりと湯に浸かって疲れを癒すだけではなく、家庭のお風呂では味わうことが出来ない非日常的な空間ならではの体験が出来るとあって、今も昔も温泉は大人気です。

普段多くの方が親しまれている無色透明の湯の温泉ですが、これは地下のマグマを熱源とする火山性温泉に分類されます。

日本は火山が多いので圧倒的に火山性の温泉が多く、一般的に温泉といえばこの火山性温泉を指すことがほとんどでしょう。

では親しみ深い無色透明の温泉(火山性温泉)以外はどんなものがあるのでしょうか。

温泉を大まかに分類すると、火山性温泉と非火山性温泉に分類できます。

非火山性温泉の中でも特に肌に優しく、温泉としては初めて北海道遺産に選定されたモール温泉に焦点を当てて、温泉王国北海道が誇る二大モール温泉をご紹介します。

褐色に色づくモール温泉

そもそもモール温泉とはなんぞや・・という方が多いと思いますので、まずはモール温泉について触れておきましょう。

『モール温泉』という語源は、ドイツ語のmoor(亜炭を含む泥炭質)からきていて、植物由来の有機物(腐植質)を意味しており、ドイツを中心にヨーロッパに広がったモール浴に由来しているそうです。

ちなみに亜炭とは植物が石炭になる前の途中の状態のことです。

はるか昔から地下に堆積された植物由来の有機物(腐植質)の発酵熱や地熱が熱源となっているため、火山の地下マグマを熱源とする火山性温泉とは異なります。

モール温泉の大きな特徴として、お湯の色が黒っぽい茶褐色や赤褐色のように色づいていています。

モール温泉以外でも褐色に色づいた温泉は数多くあるので違いが良く分からないかもしれませんが、モール温泉とその他の温泉では色づき方が全く違います。

実はモール温泉以外の色づいた温泉というのは、湧きだした時点では無色透明で、その後空気に触れることで“変色”しています。

しかしモール温泉は植物由来の有機物(腐植質)が溶け込んでいるため、湧き出した時から既に色づいている希少な温泉なのです。

植物は枯れると微生物等により分解されますが、分解されにくい繊維物質はとても長い時間かけて分解され、最終的に「フミン酸」と呼ばれる芳香族化合物(有機化合物)が残ると考えられているそうで、モール温泉の色の正体はこのフミン酸なのだそうです。

植物由来の有機物であるフミン酸の含有量や種類も源泉により異なるので、モール温泉は色・香り・肌触りなどがそれぞれ違う特色を持っていて、一概にモール温泉といっても、同じ泉質の湯は二つとありません。

ちなみにこの『モール泉』というのは、温泉法に基づく正式な泉質名ではなく、植物由来の有機物(腐植質)が溶け込み独特の色をしている温泉の通称です。

また療養泉の分類についての泉質とは全く別の概念であるため、療養泉の分類上では単純温泉や塩化物泉、炭酸水素塩泉などに分類され、効能などはそれぞれに準じるとされております。

美肌のカギはモール成分

モール成分を豊富に含んでいる温泉は、重曹成分が増えてアルカリ性寄りになる傾向があるといわれています。

一般的に美肌泉質として知られるアルカリ性の温泉は、皮膚の古い角質や毛穴の汚れを除去する効果があることから、肌がツルツルでなめらかになる‟美肌の湯”として人気があります。

植物性でまろやかなモール泉のお湯は独特のヌメリがあり、皮膚にも優しく天然の保湿成分を豊富に含んでいるので肌がツルツルスベスベになります。

またモール泉は肌への浸透性に優れているため体が芯から温まり、湯上り後も湯冷めしにくい特徴があります。

ヨーロッパのモール浴では、肌に良い成分を豊富に含んだmoor(亜炭を含む泥炭質)を直接肌に塗り、美容法として親しまれています。

皮膚に必要なイオンの取り込みを促し、細菌の発育抑制やヒアルロン酸を分解する酵素の抑制をする働きがあると考えられていることから、美肌効果があるといわれています。

皮膚に良い成分を豊富に含んだモール温泉の美容効果は『天然の化粧水』と称され、『美人の湯』や『美肌の湯』といわれる理由はこうしたところから来ているようです。

特に美肌効果に敏感な女性の方には、モール温泉での“美肌浴”はおススメですね。

さて、前置きが長くなりましたが北海道が誇る二大モール温泉をご紹介します。

モール温泉の元祖 十勝川温泉とかちがわおんせん

まず初めにご紹介するのは北海道帯広市の隣町、音更おとふけ町にある十勝川温泉。初めてモール温泉という言葉が使われた温泉としても知られるキング・オブ・モール温泉です。

現在では広い地域で見られるようになったモール温泉ですが、平成の初めころまでは十勝川温泉とドイツ南西部のバーデン地方にしか確認されていなかったという世界的に珍しい温泉でした。

十勝平野の地層には、はるか昔の植物が完全に炭化しないで残った亜炭や泥炭のほかに、花嗣斑岩かこうはんがんが広く分布しています。

亜炭などに含まれている植物由来の有機物(腐植質)であるフミン酸は皮膚を再生する作用があり、花尚斑岩は温泉の分子を細かくする特性があります。

植物のエキスと岩石のミネラルの両方を豊富に含んでいるため、ほかの植物性温泉にはない化粧水のような浸透性に富む保湿効果があり美肌効果が抜群です。

温泉王国の北海道でも、モール温泉発祥の地として全国から多くの観光客が訪れるモール泉の元祖・十勝川温泉。肌に優しい最高泉質のモール温泉を満喫することができるでしょう。

温泉法に基づく泉質名では、ナトリウム塩化物(塩化物泉)・炭酸水素塩泉(弱アルカリ性低張性高温泉)に分類されます。

日本唯一 原油を含んだモール泉 豊富温泉とよとみおんせん

豊富温泉日本最北の市である北海道稚内市から南に約40kmの位置にある豊富温泉。完治が困難といわれるアトピー性皮膚炎や乾癬などに高い効果があることで有名になり、皮膚病への効能では日本随一の温泉といっても過言ではないでしょう。

別名『油温泉』と呼ばれるように、独特の石油臭が特徴的な原油を含んだ泉質として知られておりますが、実は豊富温泉もモール泉です。

世界的にも極めて珍しい油を含んだ温泉ということで、そのことばかりが注目されがちですが、豊富温泉の湯に浸かるとモール泉特有の浴感があり、肌がツルツルになります。

肌に優しいモール温泉の特徴をそのままに、肌への刺激が少ないにもかかわらず、皮膚の殺菌作用が高いのも豊富温泉ならではの特徴です。

この原油を含んだ泉質というのは世界に二つしかなく、豊富温泉の他には世界有数の石油産出国として知られる、アゼルバイジャンのナフタレンという村にしかありません。

世界的にとても珍しいという点では十勝川温泉以上といえますね。

多くの原油(石油由来のタール)とモール泉特有の有機物(腐植質)が混じった泉質は肌に優しく、皮膚科医推奨の名湯として高い評価をされています。

温泉法に基づく泉質名では、ナトリウム塩化物泉(弱アルカリ性高張性温泉)とナトリウム塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉(弱アルカリ性高張性冷鉱泉)の2種類の泉質に分類されます。

豊富温泉の詳細については、このブログで度々紹介しておりますので、よろしければぜひ参考にしてみて下さい。

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北海道遺産モール温泉

北海道遺産とは、次世代へ引き継ぎたい北海道の自然や文化など、有形・無形の財産を北海道民全体の宝物として選定されたものです。平成13年に第一回の北海道遺産が選定されてから、現在まで52件の北海道遺産が誕生しています。モール温泉は平成16年に北海道遺産に決定しました。

北海道遺産の公式サイトでは、モール温泉を『泥炭層から湧出する美人の湯』と題して以下のように記されています。

モール温泉は、泥炭を通して湧出するもので独特の黒っぽい湯が特徴。主成分は植物性腐食質で、鉱物成分より植物成分が多いのが他の温泉との違い。また、熱源は地熱に加えて、地下の植物の堆積物による発酵熱と考えられている。モール温泉は日本各地で湧出しているが、北海道では十勝や石狩平野、豊富町などで見られる。

温泉好きを惹きつけるモール温泉

肌への様々な効能が期待できるモール泉と、温泉王国北海道が誇る有名なモール温泉を二つご紹介してみました。

温泉の中でも特に肌に優しく、皮膚病への効果が一番高いといわれるモール温泉。肌への効能で有名な温泉というのは、モール泉ならではの恩恵が深く関わっているといえそうです。

モール泉は同じ泉質の湯が二つと無いといわれるので、各地のモール温泉巡りをして比べてみたいものですね。

モール温泉の語源となったドイツのバーデンでは、昔から音楽家のブラームスやシューマンの妻でありピアニストのクララ・シューマンなど、多くの著名人が保養の為に同地を訪れた記録が残されているそうで、今もなお世界中の温泉愛好家を惹きつけているようです。